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「棟梁の仕事は、木のクセを見抜いて、それを適材適所に使うこと」。
▼木には、それぞれに個性があります。口伝に「堂塔建立の用材は木を買わずに山を買え」というのがあるそうです。また、「木は生育の方位のままに使え」とも言っているそうです。
山の南側の木は細いが強い、北側の木は太いが柔らかい、影で育った木は弱いというように生育の場所によって木にも性質があるそうです。
厳しい自然条件の中で育った木には、何百年、時には千年、二千年の間風雨にさらされ、捻れた木もたくさんあります。こんな場合、例えば、この木は右に捻れているから、左捻じれのあの木と組み合わせよう、というふうに棟梁は判断をして木を仕入れるそうです。木の捻じれは、このような使い方をすれば、耐用年数も大きく伸びます。つまり、一見短所に見えることでも、使いようによって長所に転じた事例です。
このことは人を育てる場合にも、同じことが言えるとしています。
樹齢千年の木は、木のもつそれぞれの個性を生かして建物を建てれば、千年もつそうです。
今の建築では、こうした配慮をせずに一律に製材をしてしまうので、耐用年数は極端に短くなります。樹齢六十年の木も、わずか二、三十年しかもちません。効率を求めるあまり、大切な樹木を粗末にし、自然破壊をよりいっそう深刻なものとしています。
▼また、今の建物には殆ど見られませんが、少し前までは、自然石を建物の礎石として使用していました。自然石を使用する場合、石の中心はその真ん中にあるのではなく、一番太くなっているところにあるそうです。自然石を使うときは、それぞれの表面の凹凸そのままに、柱の底を石に合わせて削り、ぴったりと合わせるそうです。
そうすると、地震なんかがあると、柱は揺れに合わせて多少ずれることがあっても、自然石上の柱の底は方向がまちまちになっているので、力が分散し、すぐに元の位置に戻ります。
現在では、基礎はコンクリートになっています。柱はボルトでコンクリートに固定してあるので、建物全体が同じ方向に揺れることになり、上にいくほど揺れが大きくなります。これでは建物が持ちません。
今から千三百年も前に実用化された工法が、今の建築には生かされていません。
明治以降わが国は、西洋の影響を受けてあらゆる分野で大きく変貌を遂げました。しかし、必要なものまで捨て去ってしまうのは残念としか言いようがありません。
▼日本人は、先人が築いてきた優れた文化を有しながら、なぜ、もっと現在に生かそうとしないのでしょうか。
禅の言葉に「自然と呼吸を合わせる」というのがあります。
自然の一部である人類は、なぜ、そのことを忘れて自然から離れようとするのでしょうか。
災害、病気、人と人の関係‥‥‥、すべては自分が自然の法則からはずれていった結果から生じていることに、なぜ気づかないのでしょうか。
参考
『木に学べ』 西岡常一著 小学館
『木のいのち 木のこころ 天』 西岡常一著 草思社
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